日本を代表する作家の太宰治は、夏目漱石や谷崎潤一郎、川端康成や三島由紀夫に並び、海外でも人気のある作家です。没後70年以上経っても人々に愛される太宰治ですが、「人間失格」や「斜陽」など、多くの作品が翻訳され世界中で読まれています。今回は、太宰治の代表作のひとつである、「走れメロス」の名言を英語でご紹介します。
Melos was enraged.(メロスは激怒した)
この印象的な書き出しは、なかなか忘れられるものではありません。Enragedは動詞enrageの過去形で、ひどく怒った、とても立腹した、激怒したという意味があります。ほかにも口語にはblew a fuseやhit the ceiling、hopping madといった表現があり、カンカンに怒っているときに使用できるフレーズです。
To doubt the hearts of men is the greatest, most shameful of evils. (人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ)
形容詞のevilには邪悪な、不吉ななどの意味がありますが、名詞になると害悪や悪弊と言った意味になります。ちなみに、good and evilで善悪という意味で、Tree of the knowledge of good and evilは聖書の創世記に登場する善悪の知識の木です。
What your brother despises most in this world is distrust of others, and deceit. (おまえの兄の、一番きらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ)
唯一の肉親である妹が結婚することになったメロスが、彼女に贈ったはなむけの言葉です。嘘をつくと聞くと、lieがすぐに思い付くかもしれません。英語版で使用されているdeceitには、欺くこと、詐欺、ペテンなどの意味があります。
Neither of us had time to make the proper arrangements. The only treasures I have are my sister and my flock of sheep. They are yours. I ask only this in return – that you always take pride in having become the brother of Melos. (仕度の無いのはお互いさまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ)
上記は、妹の夫(義理の弟)に対するメロスのセリフです。全部あげようという部分がThey are yoursと訳されていますが、これから待ち受けている運命を甘んじて受けようとするメロスの心情が現れているのではないでしょうか。
This evening I will be killed. I run to meet my own death. (私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ)
殺される為に走るのだという部分が、英語版ではI run to meet my own deathと訳されています。オリジナルも素晴らしいですが、英訳バージョンも素晴らしくドラマチックで、思わず口に出して読んでみたくなるのではないでしょうか。
I have nothing. Nothing but my life. And today I must offer that up to the king. (私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ)
走り出したメロスに災難が降りかかり、命が奪われそうになります。上記はその時のセリフですが、私にはいのちの他には何も無いという部分が、I have nothing. Nothing but my lifeと訳されていました。nothingを2回繰り返すことで、慎ましくも哀れなメロスの命さえもが脅かされている悲劇的な状況が強調されているのではないでしょうか。
I will be branded a traitor forever, the greatest ignominy known to man. No, Selinuntius, I too shall die. (私は、永遠に裏切り者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ)
裏切り者のことをここでは、traitorと訳されています。裏切るはbetrayやback-stabといい、he would never back stab me.(彼は絶対に私を裏切らない)などと使用することができます。裏切り者と言う名詞の場合には、traitor のほかにもback-stabberと言う表現を用いることができるでしょう。
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