海外でも人気の太宰治『走れメロス』の名言を英語にすると?Part2

16歳から積極的に創作活動に携わった太宰治ですが、彼が太宰治の筆名で作品を発表したのは24歳のときでした。31歳のときに「走れメロス」を発表しますが、その後も彼の創作意欲は衰えることなく、次々と作品を生み出していきます。今回は、太宰治の優れた短編集の中でも、とくに知名度の高い「走れメロス」の英語版の名言をご紹介します。

If I am to collapse here now, it will be as though I’d done nothing in the first place. (中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ)

疲労のあまり挫けそうになるメロスは、自問自答しはじめます。上記は、その時のセリフです。動詞のCollapseには、崩壊する、(事業などを)失敗する、(過労で)倒れる、衰弱するなどの意味があります。

Righteousness, trust, love – are they not merely words? We kill others that we may live. That is the way of the world. (正義だの、真実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか)

すっかり自暴自棄になったメロスは、上記のように自分に言い聞かせます。考えてみれば、くだらないの部分が、are they not merely wordsと訳されていました。疲労困憊ゆえか、それまでメロスが大切に思っていた正義や真実や愛も単なる言葉に過ぎないのではないか、と斜に構えた見方をしてしまいます。

As his body began to revive, a small spark of hope was kindled in his heart. The hope that he could preserve his honor by dying at the executioner’s hands. (肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生まれた。義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である)

動詞のKindleには火を起こすという意味のほか、(感情を)燃え立たせるという意味もあります。kindle はラテン語 candere に由来しており、白熱する、輝くという意味を持ちます。a small spark of hopeはかすかな希望の光という意味ですから、ほんの少し疲労が回復したことで、かすかな希望の光がメロスの心に灯ったことを表しています。

 I must prove worthy of this trust. That, for now, is everything. Run, Melos! (私は、信頼に報いなければならぬ。いまはだたその一事だ。走れ!メロス)

この作品のタイトル、「走れメロス(Run, Melos!)」が登場する文章です。友の信頼に報いるためだけに全力を尽くそうという、メロスの固い決意が表れてのではないでしょうか。

I have been an honest man in life. Allow me to be as honest in death. (私は生まれた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい)

~させてくださいをlet me~ではなく、Allow me to~を使うことで、より丁寧でフォーマルな印象を与えることができます。よく使う表現ですから、覚えておくと便利です。

The sun has yet to set. (いや、まだ陽は沈まぬ)

無駄だから走るのはもうやめろという人物に対して、メロスは2回上記のセリフを述べます。一度は消えてしまったものの、再び灯ったa small spark of hope(かすかな希望の光)はメロスの心で燃え盛っていることが良く理解できるでしょう。

Trust between men is not just an empty illusion. I, too, would be your friend. (信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか)

メロスとセリヌンティウスの友情を目の当たりにした王は、大きく心を動かされます。I, too, would be your friendという懇願するかのようなセリフは、王の傲慢さが消えたことをよく表してます。

A scarlet blush mantled the hero’s cheek. (勇者は、ひどく赤面した)

恥ずかしくて思わず赤面するメロス。「走れメロス」の締めくくりの文章は、意外なほどコミカルです。恥ずかしくて赤面することを英語ではblushといいますが、ここでは名詞として使用されています。Mantledは動詞mantleの過去形で、この文章では覆うという意味で使われています。

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