若くしてブッカー賞を受賞し、2017年にはノーベル文学賞を受賞した、イギリス文学界の巨匠・カズオ・イシグロ氏。今回は、日本にルーツを持つ世界的作家の名言とカズオ・イシグロ氏のおすすめ洋書作品をご紹介します。
カズオ・イシグロの英語の名言
長崎県生まれのカズオ・イシグロ氏は、1960年にイギリスに移住し、1983年にイギリスに帰化しています。そのため、The Japanese-born British author (日本生まれのイギリス作家)と紹介されることもしばしば。下記に、カズオ・イシグロの名言を紹介します。
There was another life that I might have had, but I am having this one.(別の人生もあったもしれない。だけど私が選んだのはこの人生だ)
Love isn’t about when you first meet. It’s about the many, many years you spend together, when you’re trying to keep that flame burning.(愛とは出逢ったときにはありません。その炎を燃やし続けることを一緒に試みた年月のことです)
Many of our deepest motives come, not from an adult logic of how things work in the world, but out of something that is frozen from childhood.(私たちの動機の多くは大人の理論などではなく子供時代のものそのままです)
カズオ・イシグロのおすすめ作品
日本人の両親を持ちながらも、人生の大半をイギリスで過ごした彼の作品は、英語で執筆されています。意識的に翻訳しやすい英語で書かれた作品は、英語を母国語としない人々にも読みやすく、理解しやすいでしょう。
The Remains of the Day
1989年に出版されたこちらの作品は、1993年にイギリスで映画化されました。イギリスでもっとも権威のある文学賞のひとつに数えられるブッカー賞受賞作です。日本語翻訳版のタイトルは「日の名残り」となっていますが、原題は日暮れ前の、1日の中で一番すばらしいとされる時間を指します。
物語の舞台は、第二次世界大戦が終わって数年経った1956年のイギリス。アメリカ人富豪のファラディ氏に仕える、イギリス人執事のスティーブンスが、休暇を利用して自動車で小旅行に出かけます。まるでロードムービーのような作品ですが、読者は過去を回想するスティーブンスと共に1920年代から1930年代のイギリスの様子を追体験できます。
Klara and the Sun
「Klara and the Sun」は、人工知能のめざましい発展を目の当たりにしている現代人にとって、興味深い一冊となっています。人工知能を搭載した人型ロボット(AF)のクララが語り手となって、人間の少女ジョジーとの交流の日々が描かれています。人型ロボットが、病弱な少女の親友になろうと一生懸命にお世話をする感動話のようですが、お話の語り手が人間ではないことを思い起こすと、どこか不穏で不気味な雰囲気が漂います。
Never Let Me Go
2005年に出版されたこちらの作品は、イギリスで大ベストセラーになった話題作で、2010年には映画化されました。日本では2014年に舞台化、2016年にはドラマ化されています。日本語版のタイトルは、「わたしを離さないで」。作品の中では、You have to know who you are and what you are. It’s the only way you’ll lead decent lives.(あなた方は自分が何者なのか知らなければなりません。それがまっとうに生きる唯一の方法です)のセリフと共に、衝撃的な告白が行われます。クローンと臓器提供というテーマのもと、過酷な運命に振り回される登場人物たちの苦悩と葛藤が描かれた本作は、生きる意味を考えさせられる作品となっています。
An Artist of the Floating World
1986年に出版されたこちらの作品は、英語文学賞のコスタ賞(かつてはウィットブレッド賞と呼ばれていた)受賞作品で、日本語のタイトルは「浮世の画家」。戦後、日本にある架空の町に生きる一人の画家が、価値観がガラリと変わってしまった世の中で、過去の自分の行いをどう捉えるか葛藤するお話です。日本が舞台で日本人が主人公のお話を英語で読むのは不思議な感じがしますが、平明な英語で書かれてあるため、すんなりとストーリーに引き込まれるでしょう。