これまで地球上で話されていた言語の多くが、絶滅していきました。言語の多様性が失われることには、デメリットが伴います。言語の絶滅は話者がいなくなると起こりますが、どうやらそれだけが理由ではないようです。そこで今回は、消えゆく言語とどのように言語が消滅するのかについてご紹介します。
消滅危機に瀕している言語数は?
消滅の危機に瀕している言語のことを英語で、 Endangered Languageといいます。話者が少ない言語は消滅の危機に瀕しているといえますが、現在地球上で話されている2450もの言語が、遅かれ早かれ消滅する可能性があるそうです。
言語と方言の境界線は曖昧なことがあるため、正確な言語数を導き出すのは難しいとされています。そのため、世界中で話されている言語数は7000とも8000あるともいわれていますが、少なくとも5000以上もの言語が存在するというのが言語学者たちの共通認識です。
1996年に行われたアメリカ言語学会の統計によると、6703の言語が世界で話されていました。内訳としては、アメリカ大陸で1000言語、アフリカで2011言語、ヨーロッパで225言語、アジアで2165言語、オセアニアでは1320の言語が話されていたといいます。現在、約50%の言語が消滅危機にありますが、言語学者たちは今後100年以内に、世界の言語の約90%が消滅するだろうと予測しています。
どのように言語は絶滅するのか?
話者がまったくいない言語のことを絶滅した言語といい、英語ではDead Languageと呼ばれています。たいていの場合、話者数が多い言語に取って代わられる(吸収される)ことで、徐々に少数言語が使用されなくなり、やがて絶滅します。例えば、アメリカ本土では英語が主要言語ですが、チェロキー語やアトシナ語、フーパ語やネズパース語などなど実に多くの言語が使用されています。ところが、ほとんどの人々が英語を話すようになったことで、それまでアメリカ本土の各地で使用されていた言語が消滅していくという事態が起こっているのです。
子どもたちが言語習得しなければ、途絶えてしまう言語は非常に多くあります。例えば、アラスカで話されているユピック語は、子どもたちが英語を話すようになったため、20代より下の世代はユピック語を話せません。また、カナダのケープブレトン島では、1940年代までスコットランド・ゲール語が話されていました。しかし、1970年代に入ると、子どもたちがゲール語を学ぶ機会はほとんどなくなったといいます。
時代と共に変化する言語
ラテン語や古代ギリシャ語は研究者も多く、絶滅した言語には分類されないと考える人もいるようです。古代ギリシャ語は現代のギリシャ語に、ラテン語は現代のイタリア語やスペイン語、フランス語やルーマニア語に進化しました。
とくにラテン語に関してはバチカンの公用語(バチカンでは、実際にはイタリア語とフランス語話者が多い)となっているため、まだ絶滅することはないと思えるかもしれません。しかしながら、知名度が高いラテン語も古代ギリシャ語も、古代の書物に見られるような形では現在話されていないため、絶滅した言語とみなされています。ちなみに、ラテン語が絶滅原語になったのは、15世紀頃のルネッサンス期だといわれています。 このように、新しい世代が学習する機会がなくなったため消えた言語もあれば、時代と共に進化して消えていった言語もあります。消滅の危機に瀕している言語問題は、日本も例外ではありません。UNESCOによると、与那国語、宮古語、沖縄語、奄美語などを含む8つの言語が消滅の危機にあるそうです。消滅の危機にあるすべての言語が保存プロジェクトで守られるのは難しいかもしれませんが、ひとつでも多くの言語、ひいては多様な文化が守られるよう願いたいですね。