基本的にモノリンガルの人が多い日本において、多言語話者は奇異の目で見られる存在です。自由自在に何カ国語も操るなんて、多言語話者は一体どんな脳をしているのだろう?と不思議に思うかもしれません。ところで、多言語話者に相当する英語は、言語の習得数によって異なります。今回は、多言語話者を英語でどう表現することができるのかについてご紹介します。
多言語話者とは?
多言語話者とは、読んで字のごとく多くの言語を話す人のことを指します。日本だと、2カ国語以上話せるのなら多言語話者にカテゴライズされる場合もありますが、英語では言語の習得数によって呼び方が異なります。
・Monolingual 単一言語話者
・Bilingual 二言語話者
・Trilingual 三言語話者
3カ国語以上の多言語話者になると、下記のように表現されます。
・Multilingual
・Plurilingual
・Polyglot
ケンブリッジ辞典によると、二言語以上を話す人のことをMultilingualと呼ぶと定義されています。
細分化して訳するとMultilingualは多言語、そしてPlurilingualには複言語となります。しかし、Plurilingualという単語は、現在英語圏ではほとんど使用されていません。
そのため、多言語話者を英訳したいならMultilingualかPolyglotを使用すると良いでしょう。Multilingualはラテン語から、そしてPolyglotはギリシャ語を起源とする言葉で、Polyglotのほうが多言語話者を意味する言葉としてよりフォーマルな印象を与えます。
誰でもマルチリンガルになれる可能性を秘めている
訪日外国人の数も増え、街の至るところで外国語の文字を目にするようになった現代日本は、すでにマルチリンガルな社会になったといえるかもしれません。
マルチリンガルな社会は多言語社会ですが、モノリンガルの人、そしてバイリンガルやトリリンガルの人などが共存している社会のことを表します。
一方、プルリリンガルな社会は複言語社会ですが、モノリンガルは存在せず、すべての人が複数の言語を操る社会のことを意味します。
日本の場合はマルチリンガルな社会ですが、そのほか多くの諸外国は、どちらかといえばプルリリンガルな社会だといえるでしょう。言語学者で「Babel No More」の著者であるマイケル・エラルド氏は、一般的な人が持つ言語習得能力は5カ国語ほどであるとしています。
この見解がすべての人に当てはまるなら、誰もがマルチリンガルになる可能性を秘めているといえるでしょう。
ポリグロットとハイパーポリグロットの違いは?
多言語話者であるPolyglotの中でも、Hyperpolyglotと呼ばれている人たちがいます。先述したマイケル・エラルド氏によると、6カ国語も7カ国語も操るpolyglotの人たちでも11カ国語目の習得でつまずく傾向にあるそうです。
そのため、11カ国語以上を操る多言語話者のことをHyperpolyglotといいます。
通訳者の中にもHyperpolyglotの人がいますが、アイオニス・イコノモウ氏もその一人です。32カ国語を話すアイオニスさんは、現在ブリュッセルの欧州委員会の通訳官として働いています。
アイオニスさんは、「多言語を話すことは、人生を豊かにすることだ」と述べています。
彼によると、残念ながらHyperpolyglotになるための近道やコツなどはなく、多言語を話せるようになりたいと思うなら、ただ外国語を話す環境に身を置き、積極的にコミュニケーションを取ることだそうです。
コードスイッチングとは?
ところで、多言語話者に見られる習慣で、「コードスイッチング」と呼ばれる現象があります。
コードスイッチングとは、話すことができる言語をミックスして会話してしまうことで、例えば、下記のように英語と日本語とインドネシア語を会話の中に盛り込んでしまうことを指します。
「わたしはhave worked here since 2013(2013年からこちらで働いています). もしも長期休暇が取れたら、実家にpulang kampung(帰省)したいと思います。That’s why(ですから)、sekarang(いま) 一生懸命に働きます。」
上記3カ国語が理解できる人同士であれば意思の疎通は測れるでしょうが、いずれかの言語が理解できない場合には、コードスイッチング現象が意思の疎通を阻害します。
日常的に数カ国語を操って生活している場合、コードスイッチングは起きやすい現象です。
特に、配偶者が自分と同じ言語を話す人ではなく、両者共にお互いの言語を理解しているときなどには、無意識に会話の中でコードスイッチングを行ってしまうもの。
ですが、プロの通訳者を目指すのであれば、コードスイッチングを習慣化させないほうが良いかもしれませんね。
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