海外で日本語のまま使用されている言葉があると、「翻訳できない言葉なのかな?」と不思議に思うかもしれません。海外で日本語のまま通用する言葉を外行語と呼びますが、外行語にはいったいどのようなものがあるのでしょうか?
外行語とは?
「外来語はよく耳にするけど、外行語ってなんだろう?」と、不思議に思う人もいるのではないでしょうか。外来語は外国から来た言葉であるのに対し、外行語は字義通り、外国に行った言葉という意味です。もっと正しく意味を捉えるのであれば外国で翻訳されずに、日本語のまま使用されている、もしくは定着している言葉のことを指します。
外行語の歴史は古く、その中でももっとも古い外行語はbonzo(坊主)、Jamanguexe(山伏)だと考えられています。これらの言葉は、日本を訪れた宣教者たちであるガスパル・ヴィレラの書簡やフランシスコ・ザビエルの書簡の中に登場しました。
E estes bonzos pregao ao povo de si mesmos que sao samtos(この坊主たちは自らが聖人であると人々へ宣言する)といった文章や、Antigamente os bonzos e bonzas que nao guardavao os cinquo mandamentos matavao-os(昔、5つの掟を守らない坊主と尼僧がその領主によって斬首の刑に処された)などの文章が例として挙げられます。興味深いことに、坊主はそのままなのに対して、尼僧は「ama」や「nisou」などではなく、「bonza」となっています。
さらに、1560年に京都に教会を築いてキリスト教の布教活動をしたガスパル・ヴィレラは『耶蘇会士日本通信』の中で、Chamao-se estes Jamanguexe(これらをヤマンゲシェと呼びます)と山伏について説明しています。
外行語は翻訳できない?
一般的に日本独自の考え方や風習、ものなどが外行語となりますが、外行語は翻訳できないのでしょうか?上記の例に登場した坊主は、Buddhist priestやBuddhist monkと英訳できます。また、外行語となっているHaikuやOrigamiは、Japanese poemやJapanese paper foldingなどと英語に翻訳することが可能です。
これらの例にある通り、海外で日本語のまま使用されている外行語は、翻訳することができます。しかしながら、正確に外国語に翻訳すると長くなってしまったり、意味が曖昧になってしまったりなどの難点があるようです。興味深いことに、英語圏で外行語になっている日本語もあれば、ほかの言語圏では現地語に翻訳されている日本語もあります。そのため、外行語は世界共通ではありません。
最近の外行語は?
外行語には、Bonsai(盆栽)やmiso(味噌)、Hiragana(ひらがな)やKatakana(カタカナ)などがあります。そのほか、明治時代から昭和初期にかけては、maiko(舞妓)やmiai(見合い)、geisha(芸者)、judo(柔道)、kabuki(歌舞伎)、sushi(寿司)、tsunami(津波)などが外行語になりました。昭和後期になると、yakitori(焼き鳥)やteppan-yaki(鉄板焼き)、kogai(公害)やitai-itai(イタイイタイ病)などが加わります。これらの外行語は現在でも海外で使用されており、とりたてて日本通ではなかったとしても知っている人は多いでしょう。
ところで、Tsunami(津波)が初めて文献に登場したのは、1897年のことでした。しかし、1946年4月1日に、アリューシャン列島ウマニク島近くで発生したアリューシャン地震により、大津波がハワイを襲います。そのとき、ハワイに住む日系人たちが使用していたTsunami(津波)という言葉が英語の新聞にそのまま使われ、それ以降海外で外行語として定着するようになりました。
一方、最近の外行語はkawaii(可愛い)やmanga(マンガ)のほか、hentai(変態)、hikikomori(ひきこもり)、zangyo(残業)、karoushi(過労死)などなど、なぜかネガティブな印象のものが目立ちます。kawaii(可愛い)を英語に翻訳するとcuteですが、海外の感覚のcuteが必ずしも日本の感覚のkawaiiに当てはまらないため、外行語のまま海外で使用されています。これからも増えるであろう外行語、どのような言葉が外行語になるか注目したいですね。