20世紀を代表するミステリー作家のひとりであるアガサ・クリスティ(Agatha Christie)。もしかするとミステリー小説をあまり読まないという人でも、彼女の名前を耳にしたことがあるのではないでしょうか。今回は、超有名作家のアガサ・クリスティの作品の中で、英語を学んでいる人におすすめをご紹介します。
ミステリーの女王アガサ・クリスティ
アガサ・クリスティは、「ミステリーの女王(Queen of Mystery)」、「犯罪の女王(Queen of Crime)」、「死の公爵夫人(Duchess of Death)」の異名を取るベストセラー作家です。多作で有名な彼女は50年以上にも渡る長い作家生活の中で、ミステリー小説を82作品も世に送り出しました。ほかにも、自伝や戯曲などのほか、メアリー・ウェストマコット名義でロマンス小説を6作品残しています。ロマンス小説といっても恋愛一辺倒の読み物ではなく、サスペンスやミステリー調で読み応えたっぷりのところは、さすがと頷かざるを得ません。
「7歳まで字を書けなくても問題ない」と主張する母親の意向で、アガサ・クリスティは16歳まで学校に通うことはありませんでした。遊び友だちが周りにいなかったため多くの時間を空想に費やし、父親の蔵書を読んだり、詩を書いたりして過ごしたといいます。しかし、そんな幼少期も彼女にとっては大変恵まれたものだったようです。
One of the luckiest things that can happen to you in life is, I think, to have a happy childhood.(人生で起こり得るもっとも幸運なことの一つは、幸せな子ども時代を過ごすことだと思うわ)と、彼女は述べています。
1909年に初の長編小説を完成させましたが、名探偵ポアロが登場する「スタイルズ荘の怪事件」(1920年)を発表した時から、本格的にミステリー作家として活躍しはじめます。私生活では二度の結婚を経験しましたが、二度目の結婚は14歳年下の考古学者がお相手でした。
An archaeologist is the best husband any woman can have; the older she gets, the more interested he is in her.(考古学者はどんな女性にとっても最良の夫です。妻が歳を重ねるほど興味を持つのだから)と述べたアガサ・クリスティ。この言葉から、ユーモアのセンスあふれる知的な女性だったことがわかるのではないでしょうか。
アガサ・クリスティの作品は難しい?
名探偵ポワロやミス・マープルなど、ドラマ化された彼女の作品を観たことがある人も多いのではないでしょうか?これらのドラマは脚本が良いのか、わかりやすい英語が使用されており、英語学習者の教材として最適です。ところが、アガサ・クリスティの作品を原書で読むと、英語が母国語ではない人には少し理解しにくい表現が多用されているのに気が付くのではないでしょうか。
イギリスの出版社であるハーパー・コリンズによると、アガサ・クリスティが好んで使う文法はとても複雑で、古風な表現も多いので英語学習者たちが難しく感じて当然とのこと。そこで、この出版社は中級レベル以上の英語学習者を対象にしたバージョンのアガサ・クリスティの作品を出版しています。同出版社では、「スタイルズ荘の怪事件」や「ヴィカレージでの殺人」を含む20作品は英語学習者には難しすぎると考え、2012年出版のELT Readers版ではそれらの作品が省かれています。
作品の雰囲気を変えてしまうことなく、難解な文法をわかりやすい文法に置き換える作業の難しさは想像に難くありません。例えば、「死との約束」には、「You do see, don’t you, that she’s got to be killed?(彼女が殺されなければならないのはわかりますか?)」と言うポアロのセリフが、ELT Readers版では「Don’t you agree that she’s got to be killed?」に変更されています。このように、アガサ・クリスティの作風を変えることなく、英語学習者にもわかりやすい英語で書かれたハーパー・コリンズのELT Readers版なら、楽しんで語学を学ぶことができるでしょう。
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