翻訳者になりたいけれど、将来性がある仕事なのかどうかを疑問視する人もいらっしゃるでしょう。2015年にオックスフォード大学が予測した、10年後に消える職業やなくなる仕事のリストは、それらの職業に現在就いている人たちを震え上がらせました。果たして、翻訳は10年後も生き残る職業なのでしょうか?
AI失業はありうるか
2017年、国連は「人口知能・ロボットセンター」を設立する意向を明らかにしました。これは、主に人工知能(AI)やロボット導入による大量失業を監視することを目的にしています。
国連が懸念しているAI失業ですが、総務省が発表した平成28年版「情報通信白書」の第3章「人工知能(AI)の進化が雇用等に与える影響」によると、現時点での職場へのAI導入は、アメリカも日本もそれほど進んでいる訳ではありません。
参照サイトURL:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/pdf/n4300000.pdf
しかし、慶應義塾大学商学部の山本勲教授は同調査のインタビューの中で、ルーティンジョブやマニュアルワークに関しては、コストが安ければAIに仕事を奪われる可能性が高いとの見解を述べています。
翻訳者は機械翻訳に仕事を奪われる?
「翻訳者の仕事は職人技だから、人工知能に乗っ取られる心配はない」と考える人もいらっしゃるでしょうが、実務翻訳カテゴリーの産業翻訳は機械翻訳に取って代わられる恐れがあります。
現に、みらい翻訳社が国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と共同研究で開発した機械翻訳エンジンは、和文英訳においてTOEIC900点程度のスコアを有する人と同様の英作文能力があるとされています。
確かに、かつては笑いのネタになっていたGoogle翻訳の精度は2016年11月以降、劇的に向上しました。これは、みらい翻訳社のリリースした機械翻訳エンジンと同じく、ディープラーニングと呼ばれているコンピューターの深層学習を採用したからに他なりません。
以前よりも自然に翻訳できる能力を持った翻訳システムは、翻訳者に仕事を依頼するよりも手軽でコスト削減に繋がるため、多くの人に受け入れられています。
ところが実際には、Google翻訳などの翻訳システムが翻訳した文章は、言語能力が高い人から見れば未だにお粗末なものでしかありません。
つい最近、ガルーダ・インドネシア航空という、インドネシア共和国の国営航空会社の飛行機に乗る機会がありました。
さすが国営の航空会社だけあってサービスの質も高く、満足度の高い空の旅を楽しむことができましたが、その航空会社が発行している機内誌の日本語訳の酷さには辟易しました。
体裁よく整えられた日本語の文章が羅列されているものの、美しい日本語とはほど遠い代物で、プロの翻訳者ではなく機械翻訳によるものであることは明白です。
このことからも、機械翻訳サービスが進歩しているとはいえ、まだまだ翻訳者は必要とされる存在であることを認識できるでしょう。
10年後も翻訳者として生き残るために必要なスキルとは?
英語に限らず、外国語のスキルが高ければプロの翻訳者になれるかといえば、そうではありません。
日本語も含めて高い語学力を有しているのはもちろん、調査力や交渉力などのスキルも求められます。
翻訳者の仕事は地味で根気のいる作業が多いため、翻訳者としての仕事を続けていきたいと思うなら精神力も求められるでしょう。
また、翻訳者として活躍したいのであれば、専門分野の知識が強力な武器になります。
確かに産業翻訳は機械翻訳に仕事を奪われてしまう可能性が高いとはいえ、翻訳の仕事の種類は実務翻訳だけではありません。
ですから、10年後も翻訳者として生き残りたいと思うのであれば、時代の流れと共に変化していく言語に対応できるような柔軟性を備え持ち、表現力を磨き、常に新規開拓営業ができるコミュニカティブな翻訳者を目指しましょう。
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