悲しいニュースを聞いたときに、胸が苦しくなることは誰にでもあることです。程度の差こそあれ、誰もが経験しうる共感疲労ですが、近年増加傾向にあるといいます。今回は、そんな共感疲労にまつわる英語をご紹介します。
共感疲労とは?
看護師や介護士、震災ボランティアや児童養護施設で働く人の多くが経験しやすい共感疲労。共感疲労(二次受傷)とは、ほかの人に共感しすぎて精神的に疲弊することです。近年では、児童虐待や戦争のニュース、新型コロナウィルス関連のニュースなどを見続けることで、共感疲労に陥る人が増えているそうです。
本来、他者に共感する能力は、コミュニケーションを円滑にするのに役立ちます。脳内にはミラーニューロンと呼ばれる神経細胞があり、共感力が高い人ほどミラーニューロンの活動も活発だといわれています。社会的には共感力が高いほど良いとされていますが、共感力の高さゆえ、共感疲労を経験しやすくなるのがデメリットでしょう。
英語で共感疲労は?
共感疲労は英語で、compassion fatigueです。Compassionは思いやりや慈悲の心を意味し、fatigueは激しい心身の疲労を意味する単語です。共感疲労を別の専門用語ではSecondary Traumatic Stress(STS)とも呼び、いわゆる二次的外傷性ストレスのことを指します。
共感疲労は前触れもなく突然起こるのが一般的で、他者の辛い体験がフラッシュバックしたり、悪夢を見たり、不安や緊張が高まったり、無力感に捉われたりといった症状が現れます。自分自身がショックな体験をした訳ではなくても、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と同じような症状に見舞われるため、共感疲労を経験しやすい職種に携わっている人は予防策とケア方法を知っておかなければなりません。
共感疲労の対処法は?
知らず知らずのうちに共感疲労を患ってしまうと、非力な自分を責めて、うつ病に繋がることも。ショックな事柄を見聞きして、自分が住んでいたもとの世界に戻れなくなる、悪い意味で世界観がガラリと変わってしまうのも共感疲労の特徴のひとつです。また、頭痛や体重減少、不眠を引き起こすなど健康を害することもあります。
共感疲労への対策としては、Talking about feelings with a trusted person or a mental health professional.(信頼できる人、または精神科の専門家に気持ちを話す)のが一番です。もしも共感疲労になりやすい職場に勤めているのであれば、Developing hobbies different from work.(仕事とは異なる分野の趣味を開拓すること)も役立つといわれています。そのほか、体を動かすこと、十分に休息をとることも助けになるでしょう。さらに、共感疲労を自覚することも症状の抑制に効果を発揮するようです。
共感するはempathize?それともsympathize?
英語で「共感する」は、empathizeやsympathizeです。よく似た単語ですが、empathizeは他人の気持ちを理解して同じ気持ちになることなのに対し、sympathizeは他人に同情するものの相手と同じ気持ちになっているとは限りません。会話の中で、「それめっちゃわかる!」と相手の話や意見に共感を示したいときには、empathizeやsympathize は使用せず、I can totally relate to that!と言えるでしょう。
Sympathizeの名詞形であるsympathyが使用されだしたのは1500年代で、不幸を経験した人に対する悲しみの感情を伝えるために使われます。ちなみにお悔みカードは、英語でSympathy Cardと呼ばれています。Empathy は sympathy よりも新しい言葉で、1800年代後半に使用されるようになりました。心理学者たちは、ドイツ語のEinfühlung(感情移入の意味)に相当する言葉としてempathyを用いるようになり、他人の状況に自分を重ねて、その人の感情や考えなどを共にする能力を指す言葉として使われています。Empathyが強いほど共感疲労になる可能性が高くなり、共感疲労のことをempathy fatigueと呼ぶ場合もあります。
共感疲労は日本人だけが受けているわけではありません。欧米では個々が自由だと日本人は思い込んでいますが、意外と欧米人の共感させられることに疲れています。現在世界ではさまざまな事が起こり続けています。日本のマスメディアの情報だけでは本当のことは伝わってきません。マスメディアでは報道されない海外の一般的な生活事情や考え方などを知っていく必要があります。