映像翻訳(字幕翻訳)の特殊なルールとは?翻訳のコツをご紹介

翻訳の中でも、映像翻訳には特殊なルールが存在します。この特殊なルールを知っておかなくては、映像翻訳を行うことはできません。今回は、映像翻訳の種類と翻訳に際してのルール、さらには映像翻訳に欠かせない大切な作業についてご紹介します。

映像翻訳とは?

映像翻訳とは外国語の映像に字幕、もしくはナレーションという形で翻訳を付けることです。また、ニュースのインタビューなど、外国語音声と日本語音声を同時に流すボイスオーバーも映像翻訳の一つに数えられます。字幕翻訳では、目で見てすぐに理解できる簡潔な翻訳が求められる一方、吹替翻訳では、登場人物に最適な言葉遣いや耳で聞いてわかりやすい日本語に翻訳することが求められます。ボイスオーバーの翻訳は映像翻訳特有の特殊なルールが設けられている訳ではなく、字幕や吹替の翻訳ほどの制約はありません。

映像翻訳の特殊な翻訳ルール

映像翻訳が翻訳の中でもとりわけ難しいといわれているのは、その特殊なルールのせいです。日本語の字幕翻訳では1行あたりの文字数は13文字前後、表示できる行数(行幅)は2行までと限られています。限られた文字数で内容を正確に伝えなければなりませんから、字幕翻訳では無駄な文字を省くほか、句読点は用いられません。しかし、句読点がないと文章の区切りが分からず、内容にも少なからず影響する場合には、句読点の代わりに半角か全角スペースが用いられます。

字幕翻訳と同じ、もしくは似ていると考えられている吹替の翻訳ですが、お互いに翻訳で重視される点が大きく異なります。先述したように外国語の意図をくみ取り、文字数制限のある中で的確な日本語に訳する必要がある字幕翻訳に対し、吹替の翻訳は映像中の人物の口に動きに合わせて訳文を調節しなければなりません。吹替には外国語音声を消去して日本語音声に変えるリップシンクと、外国語音声の上から日本語音声を被せたボイスオーバーの2種類が存在します。

映像翻訳(字幕翻訳)の厳しさ

字幕翻訳では、1秒当たり4文字と文字数が決まっています。これは、一般的にわたしたちが一度に読める文字数に基づいて定められました。仮に1秒当たりの文字数が4文字を超えてしまった場合には字幕について行くことができず、ストーリーを追うこと、内容を理解することが難しくなるでしょう。

例えば、「How is it going?」のセリフの長さが1秒だとすると、4文字以内に納める必要があります。この場合、「調子はどうだい?」という訳語は長すぎるため、より短い訳語にする必要があります。「How is it going?」は、「元気?」「どう?」「おはよう」「やあ」「よう」「調子は?」「具合は?」などに翻訳できますが、話の流れや登場人物に最適な訳語を選ばなければなりません。

字幕翻訳のコツ

文字数に制限がある字幕翻訳では、正確な訳語が求められますが、原文を直訳することはまずありません。原文を直訳してしまうと文字数制限にひっかかるほか、意味が伝わらなくなる場合も。字幕の翻訳者は原文の意図を正確に伝えるために、補足を加えることがあります。補足には、英語圏の文化的背景や英語ならではのニュアンスなどが含まれますが、限られた文字数で補足を加えるには、高度な日本語の表現力が必要です。

字幕翻訳に欠かせない作業に、ハコ書きとスポッティングがあります。ハコ書きとは台本にあるセリフを字幕ごとに区切る作業で、スラッシュで区切ったハコの中には話し手1人分のセリフが入ります。この作業のときに訳す必要のない情報やセリフ、感嘆詞などを省いていきます。また、スポッティングと呼ばれる作業では、字幕作成ソフトや映像編集機材を用いて字幕の開始と終了の長さ、字幕を表示する長さとタイミングを決めます。これらの作業が行われて初めて、翻訳に取り掛かることができます。

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