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マラリアの語源はイタリア語?マラリアにまつわるお話

地球温暖化が進んでいる中、マラリアは熱帯・亜熱帯地域だけの感染症ではなくなるかもしれません。いまはマラリアフリーの地域でも、今後マラリア流行地域になる可能性も。今回は、古代から現代にいたるまで人類を脅かしているマラリアにまつわるお話をご紹介します。

マラリアとは?

マラリアは、マラリア原虫を有したハマダラ蚊によって媒介される感染症です。赤血球内に寄生するマラリア原虫ですが、二日熱(サルマラリア)、三日熱、四日熱、卵形、熱帯熱の5種類がヒトに感染するといわれています。これらの中でももっとも重症化しやすく、致死率が高いのは熱帯熱マラリアです。マラリアで死亡した人の約95%が、熱帯熱マラリアに感染して亡くなっているのだとか。熱帯熱マラリアは英語では、Plasmodium falciparum malariaと呼ばれており、脳症や急性腎不全、重症貧血を引き起こしたりといった症状が現れ、24時間以内の早期治療が求められます。

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウィルスのパンデミックの影響で、マラリア感染者と死亡者の数が増加したと発表しました。長引くパンデミックの影響でマラリア対策・治療が中断されたことが、感染者と死亡者数を増やした要因だと考えられます。パンデミック前の2019年にはマラリア患者数は約2億2700万人でしたが、2020年には約2億4100万人でした。

マラリアは日本にも

マラリアは古くから人類を苦しめてきた感染症です。黄金のマスクで知られている、古代エジプトのファラオ・ツタンカーメンは10代後半でこの世を去りましたが、骨折とマラリアが原因で亡くなった可能性が高いといわれています。

日本は現在マラリアフリーの国です。ところが、かつてはマラリアに苦しめられてきました。701年に完成した「大宝律令」の中に「瘧疾(ぎゃくしつ)」と記された病名がありますが、じつはマラリアを指しています。ほかにも、「わらはやみ」や「えやみ」、「瘧(おこり)」 と呼ばれており、平安時代にマラリアにかかることはめずらしくなかったのだそう。敦良親王(第69代天皇の後朱雀天皇)、天才歌人と名高い藤原定家、平清盛などは、マラリアに感染して命を落とした説が有力だとされています。

江戸時代になるとマラリアは「起利」とも呼ばれ、高熱で寒気を感じる病気として知られていました。その後、1959年を最後に日本土着のマラリアは消滅したとされ、1962年には沖縄でも消滅したといわれています。

マラリアはイタリア語?

マラリアを引き起こす寄生性原生生物のマラリア原虫(Plasmodium)が発見されたのは、1880年のことでした。マラリアは「悪い」を意味するイタリア語「mal」、「空気」という意味の「aria」が組み合わさって誕生した病名です。「マラリア=悪い空気」と呼ばれているように、それまでマラリアは空気感染する病気だと思われており、沼地などのよどんだ空気はとくに良くないと考えられていたのだそう。

1878年、フランスの病理学者であるシャルル・ルイ・アルフォンス・ラヴランは、マラリア研究のためにアルジェリアに向かいます。そこでマラリアに感染した1人の兵士の血液を顕微鏡で調べてみたところ、三日月形をしたマラリア原虫を発見しました。ラヴランはマラリア原虫がマラリアを引き起こすと発表したものの、当時はまったく相手にされなかったといいます。それから約18年後、イギリスの医学者ロナルド・ロスによってマラリア原虫がハマダラカによって媒介されることを明らかにし、ラヴランの正しさは証明されました。

日本では土着のマラリアはないものの、今後どうなるかはわかりません。「Can I catch malaria from an infected person?(感染者からマラリアに感染しますか?)」と聞かれたら、答えはNOです。マラリアは蚊によって媒介されますから、マラリア感染者との身体的接触、唾液など体液から感染することはありません。マラリアがある国に行くのであれば、恐ろしい病気を媒介する蚊に噛まれないように、気をつけたいですね。

  

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